中小企業診断士は、試験に合格した後、3社15日以上(現在は2社以上に変更)の実務経験を積むことで登録が可能になる。
この実務経験は様々な方法があるが、
協会が行う「実務補習」
コンサルティング会社などが提供する「実務従事」
自分自身で事業主を探してきてコンサルテイングサービスを提供
するなどの方法がある。
一番の実務補習は3社15日を一気に行う15日コースと、5日間を3回にわける5日間コースがある。
独立を視野に入れている私は、この3つのコースすべてを試してみることにした。
その理由として、
下請け的な仕事を期待するなら、現役診断士の先生と知り合える人数は1名よりも複数名としたい
協会主導によらない実務により近いコンサルティングも見てみたい、
という前向きな理由や
というか15日間も有給取れない(実務従事は土日で組まれることも多い)
ことが大きな原因だった。
さらに、自分自身で事業主を探すことについては
単純にすべてを、サービス利用で取得すると15万円超の出費になってしまうという
これから独立で入用になる自分には痛すぎるという切実な事情があった。
私はすぐに独立を目指している身である。そんな私の実務補習に向けての戦略は以下の通りである。
今回の実務補習はオーディションだと捉える。
実務補習を担当する教官はベテラン診断士であり、間違いなくこの業界で生き残ってきたつわものの皆様である。であれば、絶対忙しいはず。そして時給が高いはず。
こいつ使える
と感じてもらえれば、下請け仕事はゲットできるかもしれない。
下請け仕事は、当然金額は低いだろうが、お金を頂きながら実務を学んでいけるのであれば、これほど効率のいい話はない。
ではどんな新人であれば、下請けとして使いたいと感じるだろうか
① 真面目である
仮説として、優秀である必要はないと考えた。
自分が下請けに使うなら、優秀すぎると
「ある程度のフィーを用意しないとまずいか?(赤字になるかな)」
「無駄にオリジナリティをだしてきたりしないか?」と考える。
実際、自分が作曲の仕事をチームで受注していたとき、才能があるクリエーターの一部は、こだわりが強すぎて納期を守らない、クライアントからの要望を「いや絶対こっちの方がいい楽曲だ」と折れない傾向にあった
(もちろん素直な人もいましたし、才能が○○でもこういう態度の人もいましたが。。。)
下請けに求められるのは、「元請けの時間節約」であって「クリエイティブ」ではないというのが私の仮説だったため、とにかく「真面目」に徹しようと考えた
約束を守る 言われたことは素直に従う 求められるクオリティについては全力を尽くす
この3つを軸とした。
② フットワークが軽い
これも自分自身の経験からきている。返信が遅いクリエーターに仕事を任せるのは難しい。
そこで、みんなが嫌がることは率先して手を上げようと決めた。あの押し付けあう感じは絶対教官(あるいは発注主)からみたら嫌に決まっている。
③輪を大切にする
②と矛盾するが、輪を乱す存在は、優秀かもしれないし、補習という学びの場には大切かもしれないが、それと下請けで使いたいかは全然別問題
ただでさえ「仕事が欲しい」と鼻息荒くなっているはずである。
冷静に、客観的に、多面的に自分を見なければ、ただの目立ちたがり野郎になってしまう
私は、優秀とみられたいわけでも、学問を究めたいわけでもない、お金を稼ぎたいのだ
オーディション費用(実務補習費用)5万円を振り込むとき、手が震えた
このお金は私からすると7日間働いてようやく手に入る金額だった
結婚後ろくに食事にも連れていってあげられない妻に申し訳ない気持ちになりながらも
「絶対に、絶対にこの金額を10倍にして回収する」
と心を決めてATMに打ち込んだ
実務補習に必要なお金はそれだけではない。「パソコン」が必須なのだ
私が持っているMacは音楽編集ソフト(当時は最新だったLogic8)だけは充実しているが、それ以外はからきしである
今はだいぶよくなったものの、当時のMacはオフィスソフトとの相性は最悪で、文字化け・レイアウト崩壊は日常茶飯事だった。同じデータを他のメンバーと共有するとなったら絶対迷惑がかかる。
これも虎の子の貯金を切り崩し16万円のパソコンを買った
当時出たばかりのSSD そしてCOREi7を積んだマシン
職場にある10年以上前のパソコンとはスピードがもう全然違った
当時の会社のパソコンは立ち上げから、処理が可能になるまでにトイレに行くくらいの時間は必要だったが、このマシンは立ち上げた瞬間にバリバリだった
自分のスペックに不釣り合いなパソコン
まだ合格もしていないのに数十万円という金額を突っ込んでいる。
後戻りはできない
実務補習当日 診断協会の本部へ集合 ここで初めてメンバーと顔合わせとなる。
私が参加したチームは事前に指導教官からメールが来ており、メンバーの役割分担などは話し合いのうえ決定していた。
私のチームはその年度の最年少合格者、超有名企業の方々というそうそうたるメンバーだった
でも大丈夫 受験対策本の執筆メンバーで免疫はできている
基本スタンスは役に立つけど出しゃばらない
この実務補習に向けて、業種や企業情報はいただいていたので、可能な限り準備してきた
準備の内容は以下の通りである
① まず私がこの業種で独立・開業するということをシミュレーションする
これは業種別審査辞典などを使用してその業種のビジネスモデルなどを把握
② そうすると必要な許可申請、資金、技術などがわかってくる
図書館で「なるには」的なテキストや、「○○の運営方法」などを調べる
③ それを手に入れるにはどうすればよいかなどを調べる
どう勉強すればよいか、人材はどう集めるかなど
④ 私なりに新規参入の戦略を考える
最後発で参入するにはどうすればよいか
⑤ 「実務補習で支援する企業」をライバルとしてみる
ライバルとしてみてみると、歴史や設備など様々な点で強みが見えてくる。
⑥ この企業に私の会社が勝つにはどうすればよいかを考える。
ここに弱点、つまり「弱み」が見えてくる。
⑦ 次に単純にお客様としてこの企業に注文することを考える
BtoB企業であったため、顧客企業の業種を調べる(調べ方は①と同じ)
顧客企業が発注する相手はどんなところだったらよいかを考える。
⑧ 再び妄想の私の会社に戻り、この顧客への提案を考える
⑨ 顧客にとって「うざい提案」と「うれしい提案」を考える
これで頭の中で何回もシミュレーションして初回に臨んだ
あ、7年の時を経て気づいたけれど、これって3C分析ですね。
当時は、3C分析と気が付かず、「作曲」をイメージして戦略を練っていました。
ミュージシャン時代、仕事で作詞や作曲をしていましたが、我々クリエーターも当然ですが、さすがに毎日会いたくて会いたくて震えませんし、タイトなジーンズにもねじ込みません。
じゃあどのように製作をしていくかというと
アニメのキャラクターやドラマの主人公などに「憑依」して、その人たちの心情を想像します。この憑依が甘いと「超ありきたり」な作詞になります。
すぐに、夜を数えたり、ならないスマホを眺めたりしてしまいます。
この発想で、まず完全な形で、支援企業の顧客とライバルになりきる。そこから見ることで支援企業が多面的に見えてきます。
この手法は基本的に7年たった今でも変わっていません。
競合からみたらどんな手を打ってくれば嫌なのか?を考えたり、
お客になりきって、「感じ悪い客」「出世意欲が高い購買」「手柄が欲しい部長」など様々な人間を想像して憑依しています。
この能力があったから7年間診断士でやってこれたのかもしれません。
ご参考になれば幸いです。